<計画概要> 結成以来訓練を重ねてきてついに実践の時.アルパインクライミング最初の挑戦として T と G が何度も行っている入門ルート,八ヶ岳阿弥陀岳北陵の登攀を目標に設定し,そのために必要な訓練を自分たちで考え,これまでこなしてきた.3連休を生かし,八ヶ岳山荘で前泊し,阿弥陀北陵登攀を想定したシングルアックスでの冬期登攀訓練を1日目に,まだ R がクリアしていない厳冬期赤岳登頂を2日目に,そして3日目に阿弥陀岳北陵の冬期バリエーション・登攀ルートを登る計画を立てた.
前泊したおかげ.出発の準備をして 8:00 に北沢ルートをすすむ.T のザックは乾燥重量で 26kg.最初から暑そうだったのでシェルもグローブもザックにしまう.おそらく朝沸かしたポットのお湯を含め 27kg オーバー.M と R にロープを1本ずつもってもらう.1本は会装備の 9.8mm x 50m ロープ 3.2 kg.もう1本はこの日のために用意した T の軽量勝負シングルロープの 8.9mm x 50m の 3.0kg.M は食事の歩荷もあり 30kg オーバー?.R も G も 25kg 前後の模様.2時間ちょいとはいえ,この重量を歩荷できないと八ヶ岳の冬は遊べない.G を先頭にゆっくり歩く.この日は快晴.もったいないので今日赤岳登ってしまわないか,という話をしながら1時間で堰堤広場,そこから休憩を挟みもう1時間で赤岳鉱泉に到着.テン場もまだまだあいている.トイレ近くを丁寧に整地しテント設置.今回のテントは会のステラ4にスノーフライ.いつもペグは付属のを使っていたけど今回はちゃんと竹ペグを用意して持ってきた.設営が終わったのが 11:30 近くなり,今から赤岳は無理なので予定通りジョウゴ沢で訓練ということにした.持ってきたアタックザックに荷物を放り込んでジョウゴ沢へ出発.
F1 (最初の滝)に着くとすでに人がたくさん.あいているラインで登攀訓練をやろうかとも考えたが M が F2 まで行こうよというので F1 を巻き F2 へ.F1 の上では滑落停止訓練をやっているグループがいた.ちょっと進み F2 に到着.F2 も人がいっぱい.F2 の左側を見ると下部は斜度のある雪面,中間部は岩と氷,上部は岩が露出しているちょうど訓練によさそうなミックスルートを見つける.上をみると立木に残置スリングがあり,どうやら過去に登られているちゃんとした?ルートの様だ.よく見るとリングボルトも1個打ってある.途中,氷にアイススクリューで2,3カ所プロテクションもとれそう.斜度も阿弥陀北陵よりありそうで3日目を想定した登攀訓練にはもってこい.というわけでこの斜面で訓練を行うことにした.阿弥陀北陵はシングルアックスで登ることにしているので,まず T がお手本として右手にピッケル,左手はなにも持たずリードする.下部の雪面が終わるところにリングボルト.ヌンチャクをかけてランニングビレイをとる.
まずは安心.左手でつかめそうなところは少なくピッケルだけだとけっこう難しい.アイススクリューを途中2カ所うち上部へ.最後直登は岩だが右側に巻ける雪面があり,プロテクションがとれないがその右の雪面に進む.かなりランアウト気味.下を見るといつのまにかかなりの高さ.なんとか上に抜けるとフィックスロープも張ってあり,プロテクションをとる.これで安心.立木に回り込みトップロープ支点を作り,ロワーダウン.50m ロープでいっぱいいっぱいだった.実はミックスルート初リード.かなり楽しかった.グレード的には 5.8 か 5.9 くらいだろうか.次, R に交代.登る前に簡単にピッケルをつかったシングルアックスでの登り方をレクチャー.トップロープで登ってもらう.上部の岩を直登していいよといったが,自分と同じく右に逃げる.無事テンションかけずに登り切る.これなら阿弥陀北陵も問題なさそう.もっと斜度が緩いのでリードもできるでしょう.つぎ G に交代.G は問題なし.そして M.M はダブルアックスで登攀.
3日目もダブルアックスで登るとのこと.上部の岩を直登してもらう.完全にこの部分はドライツーリング.アックスがなかなかひっかからない様子だったが,なんとかホールドを見つけて無事登りきる.次,再び T.自分もダブルアックスで登る.最後のドライの岩を同じく直登.なるほど難しいがおもしろい.ダブルアックスで岩を登るのは初めてであったが楽しい.指のかからない細かいホールドでも体重がかけられるのでこれはこれで良い.K さんも11月のアイゼントレでダブルアックスで登攀練習していたがやはり時代は岩オンリーでもダブルなのか.3日目の阿弥陀北陵は自分もダブルアックスで登ってみようかな,という気になる.次,R は M のアックスを借りダブルアックスで挑戦.みんな2回登って,なんだかんだ時間が過ぎ,そろそろ終了.R が懸垂下降の練習もしたいというので,再び練習を兼ねてシングルアックスで登りトップロープ支点を回収してもらうことに.登り切った後,なかなか降りてこない.下で見守るが寒い,寒い.本人は必死.ロープが上がっていって,その後もなかなか降りてこない.よく考えるとグローブした手で回収→懸垂下降は初めて.声をかけるが大丈夫という.時間はかかったが無事降りてくる.良い訓練&経験になったことでしょう.気がつくと F2 に人はいなくなり,最後登る?
<2日目> 4:45 起床.テント撤収がないので出発までの目標は 1h 30m.しかしなんだかんだ時間がかかって出発が 7:00 になる.もうちょっとがんばりましょう.ただみんなでかいポット持ってきててお湯沸かすのに時間かかったのでちょっとここは要改善.鍋・調理用に 2L.お湯用に 1.3L サイズのコッヘルを使ったが湯沸かし用はもう少し大きいものが必要だった.準備を終え,行者小屋に向けて出発.荷物は軽く足取りは軽やか.天気はいまいちで視界は悪い.7:40 に行者小屋に到着.早い.CT 45 分だよ.一本とり文三郎尾根へ.しばらく行くと阿弥陀岳との分岐.明日はここを右に.今日はまっすぐ進む.視界は良くないが,かといって悪すぎることもない.50m 以上は視界があるのでルートファインディングには十分.森林限界をこえると風が一気に強まる.天気良くないがさすが3連休の2日目.人はいっぱい.団体もいっぱい.G が先頭でペース作り,T は R の足取りを観察しながらラストを歩く.赤岳主稜ルートの分岐を通過.ちょうどトラバーズして主稜に向かい人がいる.ルートの岩にも人がみえる.今シーズン行けるだろうか.しばし主稜ルートを観察.文三郎道からルートが十分観察できるので風はそこそこあるがこの視界なら登攀できるだろう.分岐から離れしばらく登るとコルにでてここから岩稜帯.途中,G がコンタクトレンズの片方を失うトラブル.M と先頭を入れ替え.自分もクリアレンズのサングラスをしていたが曇りとの戦い.ゴーグル持っていてたが使わなかった.9:50 無事頂上に到着.展望はない.はじめてだった R もここまでまったく問題なし.ここから稜線歩き.こんな天気で展望もないがやはり楽しい.途中,一番の強風ポイントがあり G が飛ばされそうになる.片目見えていないとバランスが難しそうである.G は耐風姿勢を数回取り通過.無事,展望荘に到着.休憩し,少し歩き地蔵の頭に到着.ここから下山.自分も地蔵から冬に降りるのは初めてである.はっきりとした急峻な尾根を下る.雪のおかげで夏より冬の方が歩きやすい.冬は文三郎よりも楽なような気がする.ただ 2500m 強の冬の稜線歩きが必要なので総合的には文三郎ピストンより確かに難度は高いか.途中ロープにつながれた団体と何度もすれ違う.4~5人が一つのロープにつながれて何グループも上がってくるのである.ちょっとショックである.そんなことしてまで登る意味あるのだろうか.商売とは言えガイドも大変である.雪が深い急斜面の下りでびびって動けなくなっている人もいた.明らかに技術不足である.止まっている間に横をさっさと下り,しばらくすると地蔵の急斜面は終わり.ならだらかな樹林帯歩きである.静かでこれはこれで楽しい.稜線歩きとは対照的.雪のついた木々が幻想的で時間を忘れさせる.そうこうしているうちに建物が見えてきて行者小屋に到着である.終わってしまった.無事戻ってきた安堵とちょっと物足りなさ.一本とったあと鉱泉に戻る.12:00 前である.早い.
M が鉱泉でまったり昼食を取ろうというのでみんなでつきあう.贅沢に小屋で食事をしてだらだらしていると外に出たくなくなる.アイスキャンディで遊ぼうよと提案するが寒ーいと却下される.だらだら.ジョウゴ沢だとただだよ.却下.だらだら.まぁでも訓練はやりましょう.ということでまったりしきったところで外にでて予定していた訓練を行う.マルチピッチ登攀システムの復習と立木などがない雪原での確保訓練である.ちょうどテントの裏が緩い斜面になっているので,立木でプロテクションとりながらマルチの確認から.ついでに声が聞こえないときの合図の方法を議論&確認.T が登り R がフォロー,そしてツルベで次ぎ R がリード.R がセカンドのビレイセットに手間取る.周りにわーわー言われながら,完了.明日は一人でやるんだぞ.ちょっと心配になる.やはりやってよかったシステム確認.次は確保訓練.阿弥陀北陵のナイフリッジ手前3ピッチ目終了点はハンガーボルトがあるが雪に埋もれて見つからない場合があるのとその通過後4ピッチ目終了点は何もないので,スタンディングアックスビレイなどで確保する必要がある.斜度が緩いので腰がらみの方がいいよ,ということになり練習.スノーバーとピッケルでセルフ用支点をつくって確保.これは全員交代しながら練習.よしよし,大丈夫でしょう.
訓練終了.まだ時間が余っている.テン場の裏が雪がいっぱいあってふかふかなので,じゃあラッセル訓練!ということで G を除く3人がラッセルでぐるっと一周.息が上がる.ぜーぜーはーはー.複数人でラッセルする際の足の置き方を議論したりしてもう一周.体も温まり,ちょっと早めだがこの日の行動は終了.テントに戻る.お疲れ様でした.お茶をして食事をとりだらだら.夜シュラフに潜り込んだ後,眠れないというので T が難しい話をする...そのおかげか R と G はいつの間にか寝た模様.M は逆に目が覚めたらしい...すみません.気がつくと 22:00 を周り,周りもいつのまにか静かすっかり寝た後だった.慌てて自分も寝ることにする.しばらく眠れなかったが.
<3日目> 昨日は出発まで時間がかかったので思いっきり早めに起きようと思ったが,天気は遅くなるほど回復する,という予報だったので 4:30 起床.男子トイレが詰まって行列になっていたりと時間がかかり結局出発は 7:00.昨日と一緒だよ.8:00 前に行者に到着.人が一杯.大きな団体が阿弥陀北陵に向かうという.先を越されてしまった.噂によるとこの日は 30 パーティが阿弥陀北陵に向かったらしい.トイレ休憩や準備をしていたら遅くなり 8:20 頃ようやく出発.あかんです,こんなんでは.おそらく最後尾.どうせ渋滞しているのでゆっくる行けばいい.予報通りどんどん天気はよくなり青空が広がる.しかし上部は風が強そう.ものすごい速度で稜線から雪煙が流れている.順調に高度を上げるが,途中,何パーティも引き返してくる.強風による敗退.多分我々も難しいけど行けるところまでは行こう,それも経験になるし.9:30 最後の急登.みんな敗退したのでステップはなくなっている.M がステップを切りながらまず登り,息が上がり途中 T と交代.登り切るとものすごい風.なるほど,これは無理だ.ここで敗退を決める.記念写真を撮り,撤退開始.下りは危ないので M がロープを出し,交代で下降.T が下降の際,万が一のため,途中立木でランニングビレイを取り,下で M をビレイ.G と R は木のある地点で風をさけて待っている.無事全員急登を降り,下降する.下ると風が弱くなる.青空が広がる.しばらく降りると頂上付近の風も弱くなった気がする.もうちょっと待てば十分に弱まるかもしれない.今日は雪は安定していて中岳沢降りている人もいるので下山は時間短縮できる.しばらく議論をする.空を見上げると快晴.議論ののち,登り返す.10分くらいだろうか,また急登部分に戻るが,でもそんなに風は弱まった気がしない.やはりだめそうである.突っ込んだひととも何人もいたようだが最初に撤退するときに1ピッチ目?終了点にいた赤いジャケットの人がまだそこにる.おそらく渋滞でとどまっているのだろう.この風ではかなりきついはずだ.ガイドが何人も撤退の決断をしているので,もともともこの日はだめだったのである.こっちは4人組での初挑戦.自分を納得させ,本日2度目の敗退決定.青空が広がっている中の撤退は気分的には難しい.落ち着いて周りを見回すとすばらしい景色が広がっている.ここにこなければこれすら楽しめない.これを見に来たと思えば収穫は十分だ.ロープも使ったし.自分を納得させる.しばし写真撮影タイム.順調に下り 12:00 鉱泉に戻る.撤収.食事を歩荷していない T はほとんど重さ変わらず.行動食は減ったがおそらくテントが凍り付いている分重くなっている.
2kg 近いレトルトおでんを行きに背負っていた M がロープを2本背負う.13:30 に出発.15:00 前に駐車場に無事帰還.いつもの温泉につかりレストランで食事を取る.中央道はガラガラ.3連休でも冬はやはり混まないのか.あるいは小仏トンネルのペースメーカーランプのおかげか.一箇所も渋滞にあわず 21:00 前に新宿に到着.解散.
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