fc2ブログ

Entries

雪上訓練

s-2990.jpg
【期日】2016年4月17日
メンバー:TM(講師)、TR、KM、TD、TK、WU、WK(報告)
【行程】
土合駅発8:45~天神平スキー場9:15~雪上訓練~終了15:00
【報告】
 土合駅の出発が午前9時の予定だったが、全員の身支度が終わったため、少し早めに駅を出た。2台に分乗して、慰霊碑の所まで車で行く。TKさんは「久しぶりだとカンがもどらんわ」とあれこれ探し回ったりバタバタ身支度を直したり、KMさんはじっくりとマイペースだったり、なんかすごく面白いパーティ編成だと感じた。
 講師のTMさんから「今日は、みなさん講師級のメンバーが多いので、実際に講師のつもりで手本を示し、説明をしながらやっていただきます」とひと言解説があった。そこで、みんな一気に緊張。・・しかし、ロープウェーでスキー場に向かう間にも、窓外では大粒の雨が降り始めている。雨の中の雪訓。気分は、どうしても下降気味だ。意識してワイワイ会話して、一生懸命モチベーションを高める。
 例年に増して雪のない谷川岳だが、営業を終えた天神平スキー場には、幸いにもあちこちから寄せ集めた雪が、まだかなり残っている。そこをお借りして雪訓を始めた。

① アイゼンをはかず、ツボ足で全方向の歩行練習
 つま先、サイド、かかとのエッジを効かし、キックステップで雪上歩行の練習をする。方向を変えるごとに先頭のメンバーを入れ替え、歩行の要点を参加者に説明しながら手本を示す。・・しかし、なかなか実際の説明となると頭の中はからっぽで、言葉はたどたどしく滑舌も悪く、TM講師のように滑らかな解説ができない。もっと練習が必要だ。
 さらに手本を示す段でも自己流が目立ち、意外に「正確な歩行」が難しい。正しい歩き方というのは、なかなか難しいものだ。この点についてはTM講師からも「静歩行」「動歩行」という理論付きで要点の説明を受けた。
雨脚が強くなり、寒さも加わってくる。歩行のついでに、休憩時のバケツの掘り方も実習した。

② アイゼンをつけてフラット歩行。前爪を蹴りこむキックステップ
 次にアイゼンを装着して、同じく全方向の歩行練習をする。ツボ足と異なり、山靴のエッジを使わずに靴底を平に雪面に置き、アイゼンのすべての爪を効かせて歩行することが要点だ。あ、WUさんのアイゼンは最新鋭の縦爪・・シャルレ・ペツルの高価なリンクスだ。しかし、まだ装着に慣れていないためか、他のメンバーの2倍の時間がかかってたどたどしい。みんなで、冷た~くそれを眺める。
 フラット・フッティングの練習の後は、急角度の雪面を使い、アイゼンの前爪を蹴りこむキックステップの練習をする。この時、ピッケルはダガーポジション・・石突きでなくピックを雪面に刺してホールドとして使う。さらに急角度、70度程度の雪面も登ってみた。う・・、雪が柔らかくてピックが効かない。そこでピッケルのシャフトを雪面にブチ込み、もう片方の手は指を雪面に突き立てて支点にし、思いきり前爪を蹴りこんでしゃにむに雪面を登った。うん、われながら上手い。自画自賛!

③ 滑落停止
 小休憩の後、バディを組んで滑落停止の練習をした。「慣れた方向に体を捻り、一刻も早くピックを雪面に突き立てるのが一番」というが、訓練なのでやはり双方向にピックを突き立て、滑落停止姿勢の確認をする。アイゼンが引っかかるの避けるために、膝下の足上げを忘れずに!「よし、きれいに止まったぞ」と思ったらすかさずバディに両足を持たれ、ズルズルと後方に引きずり降ろされた。
 さらに前のめりに転がってから滑落停止姿勢をとったり、頭を下の状態から態勢を立て直して停止姿勢を作ったりもした。わたし、これ嫌いだ。逆さ感覚が苦手で、そもそもジェットコースターも恐い。高いビルの屋上に立つと目眩に襲われる。真っ白なオーバージャケットだって汚れてしまう。辛すぎる。早く終えよう。

④ タコつぼ掘り
 雨は止まないどころか、本降りになって激しく降っている。TRさんなどは、あらかじめこの天候を予測し、しっかりとレインウェアで訓練に臨んでいるが、それでも袖口から雨は容赦なく体に染みこんでくる。TDさんのオーバージャケットもやや時代物のようで、全身雨に打たれてとても寒そうだ。
 そんな天候にもかかわらず、講師のTMさんは、情け容赦なくタコつぼ掘りの開始を宣告した。
 え、TMさん!無理だよう。スキー場の雪面はカチンカチンで、スコップの歯が立たない。剣尖のスコップじゃないと、穴なんか掘れるわけがない。しかし、みんなの愚痴を余所に、講師は黙々と穴を掘り続けている。われわれも諦めて、すごすごと穴を掘った。幸い2~30cmも掘ると、少し雪が柔らかくなった。1mほどの深さで掘るのを止めて穴に入り、ツェルトを広げて天井にした。ほんのひと時の、身体に広がる、嘘のようなつかの間の幸せ感。

⑤ 埋没体験
 で、そのタコつぼをさらに広げて、次は埋没体験をした。頭部の空間を広げて呼吸が十分に取れるようにし、埋没者とは無線で絶えず会話が続けられるようにする。埋没時間は、5分をリミットとする。埋められる人は・・もちろん、TKさんだ。
 「誰か、手袋を貸してっ!」埋められる直前に、TKさんが叫んだ。わたしの暖かい「防寒テムレス」を、すかさずTKさんに差し出した。うわっ!やばい。貸すんじゃなかった!!
TKさんのゴム手袋は穴が空いていたみたいで、すべての指先に氷水が入って、ビチャビチャ音がする。いっそ、素手の方がマシなくらいだ。この頃みんなが嵌めている、昭和ゴム工業製の「防寒テムレス」の有効性をあらためて再認識した。
 埋没者は、上に人が乗ってもそれほどの重さは加わらないが、身動きすることはまったく不可能だ。地上の人声もよく聞こえるが、残念なことに埋められた人の叫び声は、われわれには決して届かない。
 プローブを雪に刺して、埋まった人の「突き具合」をみんなで確認した。もにゃっとした埋没者の触感が指に伝わってくる。5分を経過したところで、埋没者の掘り出しにかかった。足の方からスコップを使って注意深く掘り、ある程度のところからは素手で掘り出すが、実際の雪崩埋没の場面では、プローブもスコップも、これほど優しく扱うわけにはいかないだろう。
 「まだ埋まったことがない人」ということで、TKさんの次には、WUさんも埋没の体験をした。

⑥ アパランチビーコンを使った埋没者の捜索
 午後2時を過ぎて、雨は弱まってきた。ガスが周囲に立ちこめて、20m先の視界が効かない。ビーコンを使った捜索には、格好の条件である。TM講師のビーコンを雪に埋め、全員が交替で捜索にあたった。1番手は、わたしだ。ところがなんと、わたしのやや古いデジタルビーコン(8年前くらい?)が、さっぱり反応してくれない。いつもは、ある程度近くになると音が変わって反応してくれるのだが、今日はさっぱりだ。いつまで経ってもラチが空かないので、とうとうギブアップ!わたし以外は、全員雪に埋められたビーコンを発見して、楽々と課題をクリアした。何よりも、全員ビーコンを個人装備で持っているというのが、なんかすごい。(わたしのビーコン、家に帰って動作を再確認したら、今度はちゃんと機能した。くそっ!そろそろ買い換えかなあ。)

⑦ アンカーの構築
 訓練の最後に、スノーピケットやデッドマン、ピッケルを使って、懸垂下降やビレイ動作のための支点..アンカーの構築作業を行った。始めに、「通常の雪訓メニューではないが、講師としては、やり方を覚えてください」というTM講師の説明があった。
 雪面を30cmほど掘り、ピッケルを水平にしてそこに埋め込む。(もちろん、スノーピケットを使っても、残置がイヤならブッシュを束にしてもよい。)ピッケルの中央に、ガースヒッチでスリングを結び、引きが懸かる方向に伸ばす。この時、引きが上方にかからないように、スリングが通る溝をT字状に掘っておくことが重要である。また、運悪くアンカーが崩壊してピッケルやスノーピケットが跳ね上がり、周囲にいる人たちを傷つけないように、アンカーのさらに上方にバックアップのロープを設置しておくことも重要である。
 講師の例示の後、全員でピッケルなどを使ってアンカーの構築実習をした。この日は、雪質の条件がよく、全員のアンカーがよく効いて2~3人でロープにぶら下がってもびくともしなかった。ふだんは難しいデッドマンについても、この日の雪質では問題なくセットでき、見事にアンカーの役割を果たしてくれた。

ふと気がつけば雨があがり、青空も広がって対岸の白毛門の山並みも顔を覗かせている。
時刻も、もう午後の3時に近い。最後の最後に、ポリ袋(土嚢があれば、なおよい)を使ったアンカーの構築を確認してこの日の訓練を終えた。
 降りしきる雨にもかかわらず、丁寧で正確な説明をしてくださった講師のTMさん、本当にありがとうございました。和気藹々と訓練に臨んだメンバーのみな様、お疲れさまでした。ありがとうございました。打ち上げで食べた、水上駅前の「きむら」のラーメンが美味しかったです。
スポンサーサイト



0件のコメント

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

Appendix

プロフィール

アルプス灯会

Author:アルプス灯会
Since 1975. 今年で48周年

FC2カウンター

月別アーカイブ

ブログ内検索